GTM(Googleタグマネージャー)を活用する際に欠かせないのが「データレイヤー」です。データレイヤーを適切に実装することで、Webサイトの計測精度が向上し、より詳細なデータを取得できます。
本記事では、データレイヤーの基本からメリット、実装方法、具体的な活用方法、注意点までを詳しく解説します。
データレイヤーとは?
データレイヤーとは、Webサイト上で発生するユーザーの行動やイベント情報を構造化して管理するための仕組みです。GTMと組み合わせて使用され、特定のイベントが発生した際に、GTMへ情報を渡す役割を担います。

データレイヤーの仕組み
データレイヤーはJavaScriptのオブジェクトとして定義され、Webページのコード内で「dataLayer」変数として扱われます。例えば、以下のようなコードをWebサイトに埋め込むことで、ユーザーの購入データをGTMに送信できます。
window.dataLayer = window.dataLayer || []; window.dataLayer.push({ ‘event’: ‘purchase’, ‘transactionId’: ‘123456’, ‘value’: 5000, ‘currency’: ‘JPY’ }); |
このように、データレイヤーを活用することで、Webページの情報を整理し、GTMに対して正確なデータを提供できます。

データレイヤーを活用するメリット
データレイヤーを活用することで、Webサイトのトラッキング精度が向上し、分析の質を高めることができます。具体的なメリットを見ていきましょう。
1. 正確なデータ計測が可能
データレイヤーを使うことで、ページの構造やタグの配置に依存せず、一貫したデータ計測が可能になります。GTMの変数だけでは取得できない情報も、データレイヤー経由で正確に送信できます。
2. タグ管理の負担を軽減
GTM内でカスタムJavaScriptを用いてデータを取得する場合、管理が複雑になります。しかし、データレイヤーを活用することで、シンプルかつ効率的にタグを管理できます。
3. ページのパフォーマンス向上
通常、タグの埋め込みが増えると、Webページの表示速度に影響が出る可能性があります。データレイヤーを使用すれば、必要なデータを一括で送信できるため、サイトのパフォーマンス改善にもつながります。
4. ユーザー行動の詳細な分析が可能
データレイヤーを活用すれば、クリック、スクロール、動画再生、フォーム入力などの詳細なユーザー行動データを取得し、マーケティング施策に活用できます。
5. ページ内に含まれていないデータを計測することが可能
データレイヤーのカスタム機能を活用することで、ページ内に含まれていないデータを計測することができます。

データレイヤーを実装する方法
データレイヤーを実装するための基本的な手順を解説します。
1. データレイヤーの設計
まず、どのデータを取得するのかを明確にし、データの構造を設計します。例えば、以下のような情報を定義できます。
- ページビュー(pageview)
- クリックイベント(click)
- フォーム送信(formSubmit)
- 購入情報(purchase)
2. HTMLにデータレイヤーを埋め込む
データレイヤーは、通常、Webページの<head>
タグ内に埋め込みます。
<script> window.dataLayer = window.dataLayer || []; window.dataLayer.push({ ‘event’: ‘pageview’, ‘pageCategory’: ‘商品詳細ページ’, ‘userType’: ‘新規ユーザー’ }); </script> |
3. GTMで変数を設定
GTMの「変数」セクションで、データレイヤー変数を作成します。
1.GTMの管理画面で「変数」を開く

2.「新規」をクリック

3.「データレイヤー変数」を選択

4.取得するデータレイヤーのキー名を入力(例: pageCategory
)

5.保存

GTMのプレビューモードで確認すると、データが追加されていることがわかります。
4. トリガーとタグを設定
- 「トリガー」を作成し、イベント(例:
purchase
)を指定

- 「タグ」を設定し、Googleアナリティクスや広告タグにデータを送信
データレイヤーの活用方法
1. Googleアナリティクスとの連携
Googleアナリティクス4(GA4)と連携させることで、ページビューや購入データを正確に取得できます。
2. 広告コンバージョントラッキング
Google広告やFacebook広告のコンバージョントラッキングにも活用できます。これにより、どの広告がどの程度のコンバージョンを生み出しているのかを正確に分析できます。
3. カスタムイベントの計測
クリック、スクロール、フォーム送信など、標準トラッキングでは取得できない情報をデータレイヤーを用いて計測できます。
4. ユーザー属性データの取得
ユーザーの会員ランクや購入履歴などの情報をデータレイヤーに格納し、パーソナライズしたマーケティング施策に活用できます。
5. A/Bテストとの連携
データレイヤーを利用してA/Bテストのデータを整理し、どのバージョンが最も効果的かを分析することが可能になります。

データレイヤーを活用する際の注意点
データレイヤーを使って効果的にトラッキングや分析を行うためには、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。データの取得や送信が正確に行われないと、計測結果が不正確になり、ビジネスの意思決定に影響を与える可能性があります。以下に、データレイヤーを活用する際に注意すべき点をまとめました。
1. 正しいデータ設計が必要
データレイヤーを導入する前に、取得すべきデータ項目を整理し、どのデータが必要なのかを明確にすることが重要です。例えば、ユーザーの行動データや購入データ、クリック情報など、どのタイミングでどのデータを取得するかを定義し、ルールを統一して管理しましょう。このプロセスが不十分だと、不要なデータが蓄積されたり、必要なデータが欠落する可能性があり、後々のデータ分析に支障をきたします。また、データの命名規則やフォーマットも統一することで、他のチームやシステムとの連携がスムーズになります。
2. JavaScriptの実装ミスに注意
データレイヤーは多くの場合、JavaScriptを使用して動作します。そのため、JavaScriptの記述ミスや変数の設定ミスがあると、データが正しく送信されないことがあります。特に、データレイヤーの値が動的に変わる場合や、ページのロード時に特定のトリガーでデータを送信する場合、細かな実装のミスが起きやすいです。これらのミスが発生すると、Googleアナリティクスなどの分析ツールにデータが正しく反映されず、誤ったデータに基づく判断をしてしまうリスクがあります。コードのチェックとテストを繰り返し行い、確実にデータが正しく取得できる状態にしておきましょう。
3. データの二重送信を防ぐ
同じデータが複数回送信される「二重送信」は、特に注意が必要な問題です。データが重複して送信されると、Googleアナリティクスや広告管理ツールでの集計結果が大幅にずれてしまい、実際のパフォーマンスを正確に把握できなくなります。これにより、無駄な広告費の支出や誤ったマーケティング戦略の採用につながることもあります。データの二重送信を防ぐためには、トリガーの設定やイベント発生条件の見直しを行い、各データが意図したタイミングでのみ送信されるようにすることが重要です。
4. GTMのデバッグモードで確認
データレイヤーが正しく動作しているかどうかを確認するためには、Googleタグマネージャー(GTM)のデバッグモード、特に「プレビューモード」を活用するのが効果的です。このモードを使用することで、データがいつどのように送信されているかをリアルタイムで確認でき、誤った設定や不具合を特定しやすくなります。また、他のチームメンバーとも共有しやすいため、スムーズなフィードバックと修正が可能です。デバッグモードで確認することで、実際のユーザーに影響を与える前に問題を発見し、修正を行うことができます。
まとめ
データレイヤーを適切に活用することで、Webサイトのデータ計測精度が向上し、マーケティング施策の最適化が可能になります。本記事で紹介したメリットや実装方法、注意点を参考にしながら、GTMとデータレイヤーを活用し、効果的なデータ管理を実現しましょう。
