ECサイト運営において、売上や購入行動のデータを正しく計測することは非常に重要です。その中心的な役割を担うのが Google Tag Manager(GTM) と eコマーストラッキング の組み合わせです。
この記事では、GTMのeコマースについて、導入の基礎から拡張eコマースの実装方法、計測データの活用まで、包括的に解説します。
GTM(Google Tag Manager)とは?
GTMとは、Googleが提供する無料のタグマネジメントツールです。
通常、Webサイトで広告や分析を行う際には「タグ(コード)」を直接サイトに埋め込む必要があります。しかし、タグの数が増えると管理が煩雑になり、修正時には開発者に依頼する手間が発生します。
GTMを使えば、広告タグ・解析タグ・カスタムイベントを一元管理でき、コードを直接編集せずに柔軟な追加・修正が可能です。
GTMでできること
- Google広告やMeta広告のコンバージョンタグ管理
- GA4イベントの実装
- スクロール率、ボタンクリック、動画再生などのユーザー行動計測
- eコマーストラッキングの導入
eコマーストラッキングとは?
eコマース計測の役割
eコマーストラッキングとは、Google Analytics(GA4)と連携して、購入行動を可視化する仕組みです。
購入データだけでなく、「閲覧 → カート → 購入完了」といった一連の行動を計測することで、ECサイトの改善ポイントを明確にできます。
主に計測するイベント例
- view_item:商品の閲覧
- select_item:商品リストのクリック
- add_to_cart:カート追加
- begin_checkout:決済開始
- purchase:購入完了
GTMを使ってeコマース計測を行うメリッ
- 開発リソースを大幅に削減
→ 開発者に都度依頼せず、マーケターが自分でイベント設定できる。 - 精度の高い計測が可能
→ クリック数やスクロール率など、GA4単体では難しい計測も簡単に追加できる。 - 広告改善やLPO施策に直結
→ コンバージョンの流れを正確に把握できるため、広告配信の最適化やランディングページ改善に活用できる。
GTMでのeコマース計測の仕組み
データレイヤー(dataLayer)の活用
eコマース計測の要は「データレイヤー」です。
データレイヤーとは、Webページ上で商品情報や取引情報を一時的に保持し、GTMに渡すための仕組みです。
▼サンプルコード
| dataLayer.push({ event: “purchase”, ecommerce: { transaction_id: “T12345”, value: 15000, currency: “JPY”, items: [ { item_name: “ヨガマット”, item_id: “YM123”, price: 5000, quantity: 3 } ] } }); |
このように情報を構造化して渡すことで、GTMが正しく認識し、GA4にデータが送信されます。
標準eコマースと拡張eコマース
標準eコマース
- 計測範囲:購入データのみ
- 最低限の売上把握は可能だが、改善に活かせる情報が少ない。
拡張eコマース
- 計測範囲:商品閲覧 → クリック → カート追加 → 購入完了までの一連の行動
- 購買ファネルを可視化できるため、ボトルネックの特定に役立つ。
- 本格的なEC改善を行うなら必須の仕組み。
GTM × GA4 eコマース実装ステップ
ステップ1:データレイヤー設計
- 開発側と連携して、必要な商品データを出力。
item_id,item_name,price,quantityなど必須項目を定義。
ステップ2:GTMで変数・トリガーを設定
- データレイヤー変数を登録。
- eコマースイベント(例:
add_to_cart)にトリガーを紐づけ。

ステップ3:GA4タグの作成
- GA4イベントタグを作成し、トリガーと変数をセット。
- イベント名はGA4推奨のもの(例:
purchase)に統一。

ステップ4:デバッグ & 検証
- GTMのプレビュー機能でイベント送信を確認。
- GA4の「DebugView」でリアルタイム計測をチェック。
eコマース計測で取得できるデータと活用法
1. 購買ファネルの分析
「商品閲覧 → カート追加 → 購入完了」までの各ステップの離脱率を把握でき、改善すべき箇所が明確になります。
2. 広告効果測定との連携
Google広告やMeta広告とデータを連携させることで、CPAやROASの精度が向上し、広告投資の最適化につながります。
3. 商品別・カテゴリ別分析
- 売れ筋商品の特定
- 不人気商品の改善(価格変更、写真改善、説明文強化など)
よくあるトラブルと対処法
データがGA4に反映されない
- イベント名のスペルを確認。
- データレイヤーの構造がGA4推奨フォーマットになっているかチェック。
売上金額が一致しない
- 税・送料の扱いを統一する。
- 二重送信がないか確認。
カート追加数が異常に少ない
- SPA(シングルページアプリケーション)ではイベントが発火していない可能性。
- 仮想ページビューの設定を検討。

eコマース計測の高度な活用
カスタムディメンションの追加
会員属性やログイン状況を紐づけることで、より詳細な分析が可能になります。
広告プラットフォームとの連携
Google広告・Meta広告に購入データを返すと、機械学習の最適化が加速。特に「コンバージョンAPI」との併用が効果的です。
LPO(ランディングページ最適化)への応用
商品閲覧データをもとに、ページ改善やABテストの仮説出しに活用可能。
よくある質問(FAQ)
Q1:標準eコマースと拡張eコマース、どちらを導入すべき?
A:本格的に改善を行いたいなら拡張eコマースがおすすめです。
Q2:GTMだけでeコマース計測は完結する?
A:いいえ。データレイヤー実装には開発者の協力が必要です。
Q3:GA4の管理画面で直接設定するのと何が違う?
A:GTMを使えばタグを柔軟に管理でき、改修コストを抑えられます。
Q4:Meta広告の最適化にも使える?
A:はい。購入データをMeta広告に連携するとターゲティング精度が向上します。
まとめ
- GTMとeコマース計測は、ECサイト運営に欠かせない仕組み。
- 成功のカギは「データレイヤー設計」と「拡張eコマースの導入」。
- 計測データを活用すれば、広告改善・UI改善・商品戦略に幅広く応用可能。
これからeコマース計測を始める方は、まずは GTM導入とデータレイヤー設計 から進めてみてください。



