BtoB、つまり法人の担当者に対して効果的にアプローチするには、精度の高いターゲティングと密度の濃い説得材料が重要です。母数の多いBtoC分野と違い、BtoBでは特定のビジネスパーソンを狙います。問い合わせや資料請求といったコンバージョンの数は、必然的に少なくなるでしょう。
今回は、これからBtoB分野に進出する方に向けて、広告運用の始め方と効果的なプロモーションのコツをお伝えします。
BtoB広告運用はどうやって始めたらいい?
BtoBに関する広告運用が初めてなら、まずは基本の運用手順を踏むところから始めましょう。データやノウハウが蓄積されれば、自社の形に合わせて手法を最適化しなければなりませんが、流れの基礎は以下の通りです。
①ターゲティングと目的を設定する
②自社に合った媒体を選定する
③広告を作成・出稿する
④内容をPDCAで回す
こちらでは、上記の手順について解説します。
①ターゲットと目的を設定する
BtoB広告運用の第一歩は、ターゲット企業や業種、目的を具体的に設定することです。広告運用の「軸」と呼ばれるほど重要な工程のため、時間をかけて詳細を決めましょう。広告運用の目的は、主に以下が挙げられます。
・商品やサービスの認知獲得
・リードの獲得
認知拡大とリードの獲得では、取るべきアプローチが異なるためご注意ください。
BtoBはターゲット層の総数が少ない分、BtoCよりも競争率は高めです。そのためリードを獲得するには高精度の「ターゲティング」が求められます。このとき、ターゲットの定義はフレームワークを用いるのをおすすめします。
ターゲティングに効果的なフレームワークは、主に以下の通りです。
3C分析 | 「自社・顧客・競合」の3つの視点から分析・比較して重要成功要因を特定する |
6R | 「有効な市場規模・成長性・優先順位・波及効果・到達可能性・競合状況」の6つの観点からターゲティングの有効性を判断するフレームワーク |
STP分析 | 「セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング」の3つの観点からマーケティング戦略を立案する |

なお、ターゲティングでは「ペルソナ」というフレームワークも有名ですが、これは上記のフレームワークを用いて、ターゲットの大枠を決めた後に行う工程です。ペルソナはターゲットの解像度を上げるのが役割のため、ある程度狙う顧客層を絞り込んでから実行しましょう。
②自社に合った媒体を選定する
ターゲットと目的に基づいて、適切な広告媒体を選定します。詳細な広告媒体については後述しますが、短期的な目標と中・長期的な目標によって選ぶべき手法は異なります。媒体によって得意不得意やコストが違うため、できれば複数の媒体を選定したほうがよいでしょう。
③広告を作成・出稿する
広告媒体の設定が済めば、ランディングページ(以下LP)や動画といった媒体に合わせたコンテンツを制作して、配信します。このとき重要なのがコンテンツの「質」です。BtoB分野は似た手法を取る競合も多いため、コンテンツで差別化を図れるかがリードの母数形成を左右します。
広告界隈では「ターゲットに響くコンテンツ」を求められますが、簡単なことではありません。自身にコンテンツ作成のスキルがない場合、自作するよりコンテンツ制作のプロへ依頼するのが早道です。とくにスタートアップだとほかにやるべき作業も多いため、専門性の高い領域はその道のプロに頼みましょう。
④内容をPDCAで回す
広告運用は一度出稿して終わりではありません。広告の効果は定期的に測定して、改善点を洗い出す必要があります。広告はコンテンツの維持や出稿自体にコストがかかるものも少なくありません。費用対効果を高めるためにも、手法は常に最適化し続ける必要があります。初期段階から成果を出すのは難しいため、トライ&エラーのマインドで臨みましょう。
BtoBで用いられる主要な広告媒体8つ
BtoBの広告運用においては、ターゲットに合わせた広告媒体の選定が成功の鍵です。以下で、BtoBマーケティングで効果的な8つの広告媒体を紹介します。
SNS広告
SNS広告は、ターゲットに見てもらえる可能性の高い媒体です。仕事に限らず日常でも使っている人が多く、潜在顧客の掘り起こしにも効果的とされています。SNSの種類によってメインの利用層や求められるコンテンツが異なるため、コンテンツ制作のスキルが求められます。例えば、X(旧Twitter)なら文章力とLP制作、YouTubeなら動画編集スキルが必要です。
リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、過去に自社のWebサイトやSNSアカウントを訪れたユーザーに対して、ほかのサイトやSNSで広告を表示する媒体です。主に「Google広告」「Yahoo!広告」「SNS広告」の3つに分類されます。
リターゲティング広告の強みは、すでに過去アクセスがあったユーザーに対してアプローチできる点です。休眠顧客やリーチ一歩手前のユーザーに有効なため、母数形成の目標を短期的に達成できる可能性があります。
その代わり、リターゲティング広告は課金方式で、広告の表示やクリックごとに費用が発生します。実施開始から充分なリーチを獲得するには、予算が必要です。
リスティング広告
リスティング広告は、検索エンジンの検索結果上位に広告を表示する手法です。特定のキーワードで検索したユーザーに対して広告を表示するため、高確率で自社サイトへのアクセスが見込めます。
その代わり、以下の点にご注意ください。
・有効とされるキーワードの選定が必要
・検索ボリュームの高いキーワードは費用が高い
・広告そのものを避けるユーザーが一定数いる
・認知拡大には向かない
上記の特性から、リスティング広告は「短期的なプロモーション」「トレンドの発生」「商品の分野がニッチ」といったケースに向いた手法といえるでしょう。
タイアップ広告
タイアップ広告とは、特定のWebメディアと契約し、その媒体に自社広告を表示する手法です。関連した業界や分野に特化したメディアに広告を掲載することで、見込みの高いターゲットへ効果的にアプローチできます。例えば、グルメサイトや雑誌に飲食店を紹介してもらうのと同じです。
メディアの知名度や掲載される広告枠によって単価が異なるため、広告コストの予算配分にはご注意ください。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、Webサイトやアプリにバナー形式で表示される広告です。タイアップ広告も、厳密にはディスプレイ広告の1種とされています。テキストだけでなくGIF形式の動画や画像といったコンテンツで直感的に訴求できるため、潜在層へのアプローチとして効果的です。そのため、主にリードの獲得より認知度拡大の手法として活用されるケースも珍しくありません。
動画広告
動画広告は、動画配信のプラットフォームで、商品の魅力やメッセージを伝える手法です。スマートフォンやパソコンの画面のほとんどを使って動画で広告できるため、強い訴求力があります。
基本的に配信先はYouTubeですが、動画のアスペクト比を調整してInstagramやWebサイトの広告にも応用が可能です。ただし、文章のコンテンツや画像制作よりも制作コストが高くなる傾向にあります。
マス広告
マス広告とは、テレビや雑誌といったマスメディアを活用した広告手法です。広範なターゲットにリーチできる一方で、コストが高く、効果測定が難しいというデメリットがあります。媒体によって掲載費用が大きく異なるため、初めは比較的コストの低いフリーペーパーや地方紙がおすすめです。
広告運用で最初の成果を出すコツ
広告運用を始めたばかりの時期は、なかなか成果が上がらないものです。ここでは、広告運用で最初の成果を出すための3つのポイントを紹介します。
ファーストビューにこだわる
ファーストビューは、ユーザーが広告を開いたときに最初に目にする部分です。ここのデザインやメッセージが、ユーザーがそのページにとどまるか、すぐに離脱するかを大きく左右します。
一説には、コーポレートサイトやLPにおけるファーストビューの直帰率(ユーザーがページから離れる確率)は、40%〜70%にものぼるそうです。
そのため、ファーストビューには視覚的なインパクトと、ユーザーの興味を引く情報を効果的に配置する必要があります。強力なキャッチコピーやオリジナリティのあるビジュアルを活用し、ユーザーが「もっと知りたい」と感じるように工夫しましょう。
このような高クオリティのコンテンツを制作するスキルがない場合は、広告運用やコンテンツ制作のプロに依頼するのをおすすめします。
ユーザー目線を意識する
広告を作成する際は、常にユーザー目線を意識することが大切です。ユーザーが求めている情報や解決策を分析し、簡潔かつ伝わりやすい表現を心がけましょう。
また、ユーザーがスムーズに情報を得られるよう、コンテンツやWebサイトの配置にも工夫が必要です。とくに、競争率の高いBtoB分野では、ターゲットの心や悩みに「刺さる」ことが重要とされます。
フレームワークを用いる
広告運用では、ペルソナや3C分析といったマーケティングフレームワークを積極的に活用しましょう。フレームワークを使う主なメリットは、外的要因と内的要因を、客観的に分析できるところです。直感や経験もマーケティングに必要な要素ですが、主観的な思考に偏ると、なんらかの悪いバイアスがかかったときに気づけない可能性があります。
また、フレームワークを用いることで思考のムダがなくなり、必要なプロセスを効率的に進められます。
まとめ
BtoB広告運用では、まずターゲットと目的を明確に設定し、自社に最適な媒体を選定します。広告作成時にはファーストビューにこだわり、ユーザビリティを重視し、ターゲットに「刺さる」情報を提示しましょう。
そのためには、3C分析やペルソナといったフレームワークの活用が欠かせません。確立された手法と最適な広告媒体の選定、上質なコンテンツの提供がBtoB広告運用の成否を握ります。
また、BtoBの広告運用に関して以下記事でも詳しく解説していますので、興味のある方は是非ご覧ください。